Dear 駆け出し俳優だったあの頃の僕へ
どうも、駆け出し俳優ブロガーの疾風(@hayate_cwrkh5)です。
先日、浅野温子さん×劇団男魂(メンソウル)の舞台『イノチボンバイエ』の東京公演千秋楽(最終日)が終わりました。
顔合わせがあった7月10日から今日までの約2ヶ月間があっという間で。
その期間で本当にたくさんのことに気付いたり、学んだことがあったので、それをありのままに綴ろうと思います。
まだ熊本公演が残っているけれど、東京での2ヶ月間の備忘録をここに残しておきます。
初舞台を終えて
ことのキッカケ
僕は、つい半年ほど前に大学を退学して『俳優』という道を目指し始めました。
中学生の頃から俳優として活躍することが夢だったけど、5人弟妹の長男として稼ぎ頭にならなくてはいけないという自分に対する縛りであったり、なれなかった時はどうしようなんていう不安、なれたとしても売れる俳優になれるかどうかの保証はないなんて不安を言い訳に、ずっと自分の本当にやりたいことに蓋をしてきました。
それが就活をする中で、自分が社会人として・企業に勤める人としてのイメージが全く湧かないだけでなく『このまま自分のやりたいことに蓋をし続けていいのだろうか』という自分に対する疑問が積もりに積もっていました。
そんな中、ブライダル企業や住宅企業に内定を貰っていた僕の友人が『たった一度きりの人生やったら、俺はお笑いがやりたいんや...』と言って、内定を全て辞退し、芸人を目指し始めるその勇姿を見て、感化されて僕も役者の道を諦めずにチャレンジすることにしました。
俳優として食べていくために、食べられなかった時の保険は捨てようと思い、大学を中退し、Facebookにて『俳優を目指してる・目指してた、俳優をしているお方、劇団に所属している人はいませんか?』と声を大にしたところ、たくさんの方が色んなお方を紹介してくださって、今の師匠である野崎美子先生にお会いしました。
それから野崎先生のワークショップに何度か通っている時に「7月8月はワークショップは演出のためお休みとなります」とアナウンスされ『このワークショップがないと僕は暇になってしまいます!!!笑』と思い切って言ってみたことがキッカケで、「じゃあ一緒についてくる?」と言っていただけました。
もちろん肩書きは”役者”としてではなく”演出家助手”としてだし、当然のようにギャラはなく、7月から今日までの日程でアルバイトもせず、とにかく全ての時間をこの舞台に注ぎ込むことを条件として。
そして出逢ったのがTEAM×ONSOULだった
ドキドキする気持ちで顔合わせの会場に着き、顔合わせが始まったそこにいたのは浅野温子さんをはじめとする現役で役者としてご活躍されている方々と、劇団メンソウルの皆さんと、それを支えるスタッフの方々。
一人ひとりの簡単な挨拶をした後、読み合わせ(台本を読みながら役と大筋を把握すること)をすることになるのですが、野崎先生に隣に呼ばれ、いきなり「ト書き(台本の登場人物の動作や、照明、演出の大まかな指示)は疾風が読みます!」と一言。笑
ど緊張の中、現役役者さんの皆さんと一緒に台本を読むことができ、感無量でした。初読みだったからこそあった読み間違いでの笑いや、役者さん一人ひとりの読み方の違いなどを存分に楽しみました。
稽古・稽古・稽古の日々
毎日、都内の方まで電車で1時間半ほどかけて通い、演出家助手として色んなお手伝いをさせて頂きました。
- 会場に着いてからの会場設営
- 役者さんが仕事や他の舞台で合流できない時の代役
- 音響OP
- 役者さんや野崎先生のSNSやPC作業の補助
- 稽古風景の写真撮影
など、言ってしまえばなんでも屋として稽古に参加していました。それでも毎日ベテランの方々の芝居や役作りに打ち込む姿、日々洗練されていく演技を目の前で見れるということが僕にとって大きな財産となりました。
稽古場がスタジオとなり、本番の舞台セットとなる頃にはほぼ代役を務めなくなりましたが、一度だけ出演者の方がどうしてもオーディションで抜けなければならず、その時の代役を務めた時は、見る2時間とやる2時間の体感速度の違いを身を以て体感しました。
本番間近となっていたので、台本を持って代役を務めるのは皆さんに失礼だと思い、前日の夜にひたすらその人のセリフを叩き込み、毎日見ていた記憶を遡って動きも組み込み、見事やってのけた時の達成感も清々しいものでした。
ついに始まった東京公演
公演が始まってからは、映像OPと制作スタッフとして、稽古の時とは打って変わって役者の皆さんとの線引きが明確にできました。
- スタンド花の設置
- 花に水やり
- 掃除
- 届くものの整理
- 当日パンフレットの折り込み
- 荷物運び
- ゴミ処理
- 物販
- 差し入れ預かり
など「本当に自分は役者志望なんだろうか?」と疑ってしまうぐらい裏方に徹しました。それでも見てくれている人はいて、昨日の打ち上げでは「よく頑張った。」と褒めてくださる役者さんがたくさんいました。
とある役者さんには
「今回の裏方を経験したことで、次に自分がステージに立つ時は、そういう人がいて成り立ってるんだってありがたみを持って立つのと、そうじゃないのとでは全く違うよ」
と言ってくださったり
「制作とかに氣を回さないぐらい板の上で役と向き合って表現するのが役者の仕事だ」
と言ってくださったり、いろんなお方の役者としてのこだわりもお聞きすることができました。
実は劇中のとある部分で声出演だけ果たしていたのですが、まだステージに立つ役者としてじゃなくても観に来てくださった方が6名もいらっしゃいました。
嬉しいことに皆さん差し入れを持って来てくださって、満足して帰ってもらえて、誘ってよかったなと。声をかけてよかったなと心から思いました。
もちろん他の方にもたくさん声をかけました。
「公演は観に行けないけど、次は役者としてステージに立つ時にまた声をかけて欲しい」
「夢が叶っていく過程を見れて私も頑張らないとなって感動してる」
「いつもブログを通して見守ってるよ。次は見に行くね!」
と会えなくても、たくさんの応援の言葉を頂きました。次こそは「ステージの上に立つ役者としてお誘いしよう!」と引き締まりました。
そして迎えた千秋楽。最終日は190名を超える満員御礼。僕の初めての舞台が無事に幕を閉じ、少し落ち着いた日常が戻ってきました。
そんな舞台の現実と醍醐味
僕が何より素敵だなと思った舞台の醍醐味は『チーム一丸となって長い期間を共に過ごす』ということ。
誕生日の役者がいれば、サプライズで誕生日を祝い、稽古が終われば飲みに行く。長い時間を共に過ごすからこそのコミュニケーションがある。建前や当たり障りのない会話ではなく、チームだからこその本音で話し合うシーンも見受けられた。
そして『舞台の芝居は生もの』だということ。
2週間、計16ステージもの公演があった訳だが、一度として同じ芝居や作品はない。その日の役者のコンディションや観客との雰囲気作りで作品も変わってくる。映像のように撮り直しが効かないから、ミスはミスとして作品になる。
これら2つは、映像(テレビ)の世界となると、写真の繋ぎ合わせなので舞台のようにはいかないということも教えてもらい、僕は舞台が好きだなと思いました。
もちろん、素敵な一面だけではありません。
- 活動拠点から遠いと交通費は莫大にかかる
- 稽古や舞台中はアルバイトができない
- 定職につかずにアルバイトで生計を立てている人の方が多く、役者だけで食っていけている人はごく少数
主に経済面でのそれは、早急に解決するべき項目だなと身を以て感じました。
この2か月の間に主に学んだこと
芝居は嘘じゃない
僕は今まで、お芝居とは嘘を演じることだと思ってました。
でも実際は違って、台本の中の役と「これでもか!」と言わんばかりに向き合って、その役が感じていることや伝えたいこと、生身のリアリティを追求して表現するということなんだなと。
嘘はバレるし、感動のシーンが嘘泣きだったら泣けないのは当然。例えば、顔で泣くんじゃなくて、腹の底から泣くとか。
だからこそ、その役の家族構成だったり、具体的な記憶やバックグラウンドを構築して感情を抱くように役作りをしていく。それらが鮮明であれば鮮明であるほど、感情も付いて来やすい。
自分本位の演技か、そうでないか
自分本位とは「自分がこう演技しよう!」とか「こうセリフを言おう。」と自分にベクトルが向いていること。
一人芝居ではない限り、作品を創る上でどうしても必要となってくるのが、コミュニケーション。自分や相手のアクションに対して、リアクションがあって初めて芝居が成り立つ。
- 相手や他の人をどう活かすか
- 作品や台本自体をどう良くしていくか
そういったところにベクトルを向けられるように、自分の役作りやセリフ入れなんかは早ければ早いほどいいんだろうなって。
稽古ではどんどんと失敗や挑戦をすること
本番失敗ができないからこそ、セリフの言い方や音・役作りのパターンの違いなんかをどんどんと試して、演出家にダメ出しをしてもらう。
なおかつダメ出しを貰わなかった部分は良いということだから、それを記憶したまま他の部分をブラッシュアップしていく。その日の100%に次の稽古では、さらに10、20と加えていき、本番では200%のパフォーマンスをする。
特に泣けた時や感情が高ぶる演技ができた時は、それを自分の全身で記憶しなければならないし、毎回そのパフォーマンスができなくてはならない。だからこそ「集中力」であったり、感情が湧き出る「キーワード」や「スイッチ」を探すことも求められる。
常に記憶とトライ&エラーを繰り返すからこそ、一度言われたことを忘れないのも大事だが、時には全て崩して新しい角度から表現することも求められる。
人との繋がりを大切にするということ
僕が今回、駆け出し俳優なのにも関わらずこの舞台に関われたのは紛れもなく、とある友人が僕を野崎先生に繋いでくれたからである。
そして舞台には立ってないけども、観に来てくれた6人の人には多大なる感謝をしているし、僕が夢に向かって頑張っている姿を通して伝えたいことを届けたい人がたくさんいる。お客さんがいてこその舞台だからこそ、これまで以上にもっともっと人との繋がりやご縁を大切にしようと心から思った。
役者さんの中には、毎朝今日来る自分のお客さんが誰なのかを聞いてくれて、名前を覚えてから楽屋入りする人もいたし、舞台が終わるとすぐさま帰る準備をして、来てくださった方とご飯に行ったりしていた。
他にも、映像・舞台監督・舞台美術・デザイン・照明・制作・スタッフ・メイクなどたくさんの人が関わって一つの作品が出来上がっていく。
その中で、一緒にお仕事をした人の名前や顔は忘れないし「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるような魅力的な人になろうとつくづく思った。それこそ、自分に関わる人全てを味方にしてしまうような求心力を持ったワンピースのルフィのように。
おわりに
冒頭で紹介した芸人を目指していた彼は、吉本興業の養成所に入り、先日M1の予選にも出場していました。僕よりも一歩先にステージに立って、舞台上から人を笑かして楽しんでいます。
僕の良きライバルであり、同じ「諦めかけていた夢を追う」同志です。
先にステージに立たれたのはちょっぴり悔しいし、先を越された感があるけど、僕は僕で今できる最善を尽くし続け、一歩ずつ着実に前へ前へと進んでいきます。
僕がこの舞台に関われたのも、大学を卒業して退路を絶ったからなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
それでもあの日の選択は間違ってなかったんだなって今では思えるし、まだまだ積み上げるべき結果や成果がたくさん残ってる。
だからこそ、これからも一人でも多くの人に「人生って楽しいよ!」って、「夢って叶えられるよ!」って、「一歩踏み出す勇気を与えられるように自分の生き様を通して背中を押すよ!」ってたくさんのメッセージを伝えるために僕は人生を楽しみ続けます。
そんな僕・小林疾風と「夢を諦めていたあの日の僕へ」と「イノチボンバイエ 熊本公演」も、応援よろしくお願いします(*^^*)
From この2ヶ月がとても幸せだった今の僕より